頑固猫の小さな書斎 世界史とお茶を愛する猫の小さな部屋
後継者戦争その2 ディアドコイ戦争その2 　西方諸州の波乱を迎えつつある中、バビロン会議後のパルティアを含む東方諸州はバクトリア西部の大反乱を除いてはおおむね平穏であった。その後のトリパラディソスの会議後と併せて文献によって差異があるが、各州の総督はおおよそ以下の通りとなる。 バビロン会議後の総督 ・パルティア プラタペルネス（ユスティヌスはフィリッポスとする）。 マケドニア人将軍。 ・ヒュルカニア（カスピ海南岸） プラタペルネスが兼任 ・インダス川流域 ポロス。 東部パンジャブー地方の王でアレクサンドロス大王に敗れた後はその忠実な同盟者としてインド方面の安定に努めた。 ・パンジャブー地方 タクシレス。 ポロスと対峙していたタクシラ王で、その後大王の仲介でポロスと講和していた。 ・その他インド諸地方 アゲノールの子ペイトン。 具体的な支配領域は不明。ポロスとタクシレスの監視を兼ねていたと思われる。有能な指揮官で後にアンティゴノスに信頼されるが、プトレマイオス1世とのガザの戦いで戦死。 ・バクトリア東部及びパラパニサダイ（カーブル、カーピシー周辺） オクシュアルテス（ヴァフシュヴァル）。 パライタケネ（現ウズベキスタン西部）を支配下に収める在地豪族で大王の妻ロクサーネの父。パラパニサダイを加えて広大な領土を支配し、おそらくこれ以後実質的なバクトリア王としてアラム語ヴァフシュヴァル銘の金貨を発行している。 ・アラコシア（カンダハール地方） シビュルティオス クレタ出身のギリシャ人将軍。長命を保ち、アラコシアがマウリヤ朝統治下となった後も当地のギリシャ人を統治する立場であったという。 ・ゲドロシア（現パキスタン沿岸、マクラーン） シビュルティオスが兼任 ・アレイア（現代のアフガニスタン、ヘラート近郊） スタサノール キプロス出身のギリシャ人将軍。内政に才能が有り、その統治はどこを任されても領民の支持を得ていた。 ・ドランギアナ（後のシースターン地方、正確な領域は不明） スタサノールが兼任 ・ソグティアナ（アム河とシル河の間にある地域） フィリッポス（ユスティヌスはスタサノールとする）が就任。出自は良くわからない人物。おそらくマケドニア人。 ・バクトリア西部 フィリッポスが兼任。しかし在地ギリシャ人の反乱ですぐさま統治体制は瓦解した。メディア総督ペイトンによって鎮圧された後もフィリッポスに統治の実権はなかったと思われる。 ・ペルシス（イラン南部） ペウケスタス。大王の近衛出身の将軍。ペルシスではペルシア人の風習や文化を尊重して統治を行い安定させた。やがて東方諸州を束ねる立場となるが、政治的・軍事的に才能はそれほどではなく、その後は精彩を欠いた。 ・カルマニア（現ケルマーン） トレポレモス ヘタイロイ騎兵出身のマケドニア人将軍。前パルティア総督。現地の民には善政で臨み、評価が高かった。 ・バビロニア（イラク南部） クレイニアスの子アルコン。 大王の近侍出身でマケドニアのペラ出身。 ・メソポタミア（イラク北部） アルケシラオス ・北メディア（イラン北西部、アゼルバイジャーン）） アトロパテス ゾロアスター教徒でメディア地方の豪族。メディア・アトロパテネ王国の祖。ペルディッカスに娘を嫁がせていた。アゼルバイジャーンは彼の名に由来する。 ・南メディア（イラン北西部、ハマダーン近郊） ペイトン。インド総督とは別人。バクトリアの反乱鎮圧以後は東方世界の支配者になる野心をあらわにする。後のペルディッカス暗殺の首謀者の一人。陰謀家・野心家であるが長期的な視野に欠け、暗殺や裏切りを繰り返した。彼の無節操な行動が後継者戦争の混乱と長期化を招いた。 トリパラディソスの軍会以後の東方の総督 ・パルティア 　元バクトリア太守フィリッポスが転任。 ・インダス川流域 　ポロスが留任。 ・パンジャブー地方 　エウデモスが就任。 ・その他ガンダーラなどインド諸地方 　アゲノールの子ペイトン。 　オクシュアルテスの領土を一部割譲された。 ・パラパニサダイ 　オクシュアルテスが留任 ・アラコシア 　シビュルティオスが留任 ・ゲドロシア 　シュビルティオスが留任 ・アレイア 　スタサンドロス。キプロス出身の軍人。 ・ドランギアナ 　スタサンドロス ・ソグティアナ 　スタサノールが就任 ・バクトリア西部 　スタサノールが就任 ・ヒュルカニア 　プラタペルネスが留任。 ・メディア 　ペイトンが留任。 ・ペルシス 　ペウケスタスが留任 ・カルマニア 　トレポレモスが留任 ・バビロニア 　セレウコスが就任。後のセレウコス朝の開祖。 ・メソポタミア 　アンフィマコス。 大王の異母兄弟ともいわれる人物。カルディアのエウメネスに組してガビエネの戦いに参加した。その時に戦死したか、アンティゴノスに処刑されたと言われる。 Copyright 1999-2011 by Gankoneko, All rights reserved.